『染、色』は「染色」であって「染色」にあらず

 

 

加藤シゲアキ原作、初脚本舞台『染、色』を鑑賞してきました。

 

延期になっていた公演で、

 

加藤シゲアキ初脚本

 

という貴重なこの舞台、決まった当初は何がなんでも見に行かなくては……!

 

という強い気持ちがあったけれど、コロナとか色んなことでめそめそしてて行くかどうかギリギリまで迷ってました。

 

まあね、

 

 

結局行くんかい。

 

 

ってね。

 

行っちゃった。

オタクの活動を諦め始めたらヤバいなって思ってしまったので。

なによりも、こんな記念公演、当てておいて行かないなんて絶対後悔する、と思ったから。

 

 

それはそうとして、感想つらつらと書いていきます。

以下、内容をガッツリ書いておりますので、ご了承ください。ネタバレしたくない方は自衛お願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台の設定は原作と大まかに同じ。美大に通う主人公と彼を取り巻く5人との物語。

 

大きな改変は

1.登場人物の名前

2.主人公と登場人物の関係

の2つ……かな?

 

1.登場人物の名前

登場人物の名前がちがったらそれはもう別の作品では?と思ったけれど、そこに関しては後で言います。

まず主人公、

原作:市村文都→舞台:深馬(読み:みうま)

そして、主人公と深く関わる女性

原作:橋本美優→舞台:真未

 

 

最初に主人公の名前を聞いた時の違和感がすごかったのはそれでか!という感じ。(この時点で感想ツイートが詰む)

 

加藤シゲアキ先生、

 

『原作者という立場をいいように使って、大きく変えております』

 

とは言っていたけど、そこから変えちゃうの?みたいな気持ちになった。

 

でも!ただ変えただけじゃなくて、それがまた伏線なところも好き。そうなのよ、伏線なのよ。

 

 

2.主人公と登場人物の関係

以下、原作のあらすじ

 

美大に通う市村は、彼女の橋本杏奈を連れて母校の芸術祭をまわっていた。杏奈は自分と同じ苗字である生徒が描いた作品を絶賛していたが、市村には途中でさじを投げてしまった作品のように思えた。

芸術祭の後、1人で何気なく土手を歩き続けた市村は、その張本人・橋本美優が午前2時にも関わらず橋脚にカラースプレーでグラフィティアートを描いているところに遭遇する。聞くと美優も芸術祭の中で市村の作品が最も印象的だったという。

美優のアパートを訪れるとそこには描きかけの作品がたくさんあり、互いの作品の意図を理解しあっているとわかった2人は結ばれる。

その日から、杏奈との関係も続けながら毎日のように美優のアパートを訪れるようになる市村だったが、美優がいつも自分の腕にカラースプレーを吹き付ける行為の重要性だけは理解できなかった。

橋脚に描いたグラフィティはどんどん増え、いつからか「HANDS」と呼ばれて謎の覆面アーティスト集団としてネットやテレビで話題になるが、2月半ばのある日、美優から学校を辞めてロンドンに行くことにしたと告げられ、2人の関係は終わる。

卒業式の日、美優を初めて見かけた店の壁に美優の名前を含んだURLが描かれたハガキを見つけた市村はアクセスしてみるが、そこには見覚えのある作品は1つもなかった。

美優が住んでいたアパートは当然のように今は空室で、市村はそこで美優のことを思い出しながら自慰をするが絶頂は迎えられず、あの日々の色彩はどこへ行ってしまったのだろうと考えながら、「今から会えないかな」と杏奈に電話をする。

(参照 Wikipedia)

 

 

 

改めてすごい話だな。しみじみかんじちゃうわ。

 

 

舞台はというと、

 

大学の展覧会に向けて作品作りをする深馬。しかし、作品の完成間近に作り直したりと、いつまでも作品を完成させることができないでいた。

そして、展覧会当日、彼女の杏奈や同じ美大に通う北見、原田と共に作品を見に行く。

自分の作品に対して感想を求めるがみんなからは気を使ったような曖昧な答えしか返ってこない。ほかの作品も見ている間に、謎の女性(真未)が現れ、深馬の作品に手を加える。

再び深馬のところに戻ると、作品が描き換えられていたことに深馬は違和感を感じるが、他の人は全く気づいていなかった。むしろ、その作品に好感を抱き、これまで以上の評価をしてくれる。

深馬は、自分の作品のようで、自分の作品ではないものに戸惑いつつも、皆からの評価を嬉しく思っていた。

しかしながら、未だ創作に対して悩む深馬は、夜中に酒を飲みながら高架下でスプレー缶で落書きをする。途中で酔いがまわったのか、いつの間にか眠ってしまう。その間にまた女性(真未)が現れ、深馬の作品に手を加える。

目が覚めるとさっきまで自分が描いていたものに描き加えられた作品が目の前にあった。何度もそんなことがあり、深馬はその犯人を捕まえようとする。そして、いつものように高架下でスプレーアートをし、眠ってしまった深馬の元へ女性(真未)が現れる。深馬は真未を捕まえ、話を聞いていく。すると、展覧会でも深馬の作品に手を加えたのは真未だったことが判明する。

真未に

『なんで俺の作品に手を加えるんだ』

と詰め寄るが、

「あたしが完成させてあげてるんだよ。自分の死ぬところはいつまで経っても見れないからね。」

と、完成した作品=死体と例え、作品をいつまでも完成させられないでいる自分を会ったばかりの真未に見抜かれ、怒った深馬は『見とけ!』スプレーアートを完成させようとするが、やはりできない。そんな深馬に寄り添い、共に作品作りをすることで深馬は高架下でのスプレーアートを完成させる。最後に2人の手を重ね、タギングをする。

 

真未のアパートにも行くようになる深馬だったが、真未の腕にスプレーで着色する行為の意味は分からず、「なんで汚すの?」と深馬が聞くが、真未は「汚してるんじゃない、洗ってるの」と答える。

2人でのスプレーアートはいつしか「ポリダストリー」と呼ばれ、世間で話題となる。

 

そんなある日、展覧会での深馬の作品が芸術会の重鎮に認められ、その人の主催する美術展への作品依頼が来たことを教授の滝川(滝川も舞台オリジナルキャラかな)に伝えられる。

悩みながらも、真未とのスプレーアートを繰り返すうちに、これまでの行き詰まりが解消され、作風にも新しさが見えてきた。

作品を完成間近に控えていたが、何者かに深馬の美術展への作品が壊される。やはり自分は完成させることができないのだと感じ、また負の連鎖が続いていく。

 

そんな中で、真未との共作「ポリダストリー」も何者かに手を加えられていることが話題になる。真未と共に犯人を捕まえようとするが、そこに現れたのは教授の滝川だった。さらに、その様子を撮影していたのは同じ美大の生徒で、友人の原田だった。

滝川は深馬の才能を羨み、同じく天才的な作品を描くポリダストリー(正体は不明だった)にも深く嫉妬していた。そんな天才の作品を自分のものにすることで滝川は天才に少しでも近づこうとしていたのだった。

原田は、美大に入り友人のいない中で声を掛けてくれた滝川に感謝し、滝川の計画に恩返しのつもりで手伝っていたのだった。滝川の勧めで、様々な場面で深馬のことを撮影していた原田は、隠し撮りしていた深馬の作品を壊した犯人を教えてくれる。

 

深馬の作品を壊したのは真未だった。

 

『どうしてあんなことしたんだ!』

と問い詰めると真未は

「深馬が頼んだんだよ!?私が代わりにやってあげたんだよ!?」

と返す。

「深馬はずっと絵を辞める理由を探してたじゃん!明確な理由を作ってあげたの!」

『俺はそんなこと頼んでない!』

口論になった2人はその場で別れてしまう。

 

深馬は、真未と別れ、原田に瀧川がポリダストリーであることを偽装していた動画をSNSに上げることを了承する。そしてそのまま意識を失う。

 

深馬が目覚めるとそこは病院だった。1週間ほど眠っていたことを病室にいた恋人の杏奈に伝えられる。北見や原田も見舞いにやって来て、そこで深馬は北見と仲直りをする。(深馬の作品を壊したのは北見なのではないかと疑っていた。)そして、2人から滝川が大学をやめたことを告げられる。

 

退院後、卒業を迎えた3人は居酒屋にいた。(これは原作の冒頭と被る)北見と原田は就職が決まり、深馬は留年して進路を決めることになっていた。

その場で深馬がポリダストリーの話をすると、2人は頭にハテナを浮かべる。美術展への作品を壊した真未の話もするが、2人は「やっぱりまだ……」と表情を曇らせる。

 

例の動画をもう一度確認しようとすると、そこには自分の作品を壊す深馬自身の姿が映っていた。

 

真未は深馬の中にいたもう1人の深馬だったのだ。

 

ここから、追憶するように話は進んでいく。展覧会で深馬の作品に手を加えたのは深馬自身であり、ポリダストリーも深馬が1人で描いていたものだった。混乱した深馬は真未が住んでいたアパートに向かう。そこには、真未を肩車してペイントしたピンクの塗料が壁についていた。

真未のことを思い出し、ソロプレイをする深馬だったが(舞台でもやるんかい)最後には弱々しく杏奈に「今から会えないかな……」と電話をする。

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所々原作の描写もあったけれど、話は割と大きく変わっていてめちゃめちゃ驚き。

でも違和感なく話は飲み込めたし、私が大好きな伏線回収展開に鳥肌がたちまくってしまった。

なによりも、原作で

 

自分ではない人との記憶が染み付いた「染色」

 

というものから、

 

自分自身の自分も知らない部分に浸食されるように染み付いた「染、色」

 

という展開がより生々しさが増した感じがして怖くて、面白かった。

 

「染、色」

 

と、間に点を入れた意味がある。

 

というか、入れないと成り立たない話だったなと感じてしまった。

 

あとね、何回も

 

おい!!!シゲアキの性癖ぃ!

 

と、私の心の中のノブがめちゃめちゃ叫んでた。

 

就活で面接をしている杏奈(現実?)との対比で深馬と真未の絡んでるシーン(妄想?)を同じ画角に入れるとか、

 

その深馬と真未の絡みが実は深馬のソロプレイだったとか、

(それが明かされるのはラスト)

(ラストにそんなシーン入れます?原作もだけどさ)

 

杏奈が大学生とは思えないくらいなぜなぜ期の女の子だとか、

 

 

シゲアキの性癖。シゲシゲしい。

 

そういう所も、まぁ、嫌いではない。

 

……堂々と好きとは言えないけど。

 

 

あとね、ずっと気になってた。

 

 

主人公深馬の友人、北見が何気なく話した秋に咲く桜の話。

冒頭がこの話からなんだよね。

原作にもない話。

 

深馬はやたらと

「秋に咲いた桜は、ちゃんと春にも咲くのか!?」

ってこだわってたので

『これは……伏線か……?』

とすごい気になってたけど、特に触れられず。なので、調べました。

 

秋に咲く桜は『狂い咲き』と呼ばれ、

 

①害虫や台風によって葉を無くすことで、"休眠ホルモン"と呼ばれる花を時期まで開花させないでおく栄養が花芽に行き届かないこと

②涼しい気温から一気に暖かい日が続くこと

 

が重なる時に怒る不時現象である。

また、桜に対して過度なストレスがかかると、早く花を咲かせて、種子を残そうとするため、狂い咲きが起こる。

狂い咲きをした桜も、次の春には残っていた桜 ものが開花する。

 

 

とのこと。

深馬が、狂い咲きの桜を自分に当てはめていたのだとしたら、舞台終盤で言っていた

 

『俺は入学の時にたまたま上手くいっただけなんだ……それをみんなが……北見の方がよっぽどすごいのに…………』

 

っていうセリフ。(ニュアンス)

周りからの期待だとかが過度なストレスになった深馬のナカで、精神的に狂い咲いて、生まれたのが『真未』という人格なのかな、と。

生まれたというか、蓄積されていた、っていうのが合ってるのかな~。

 

咲くべきとき(深馬が望んでいたのが何時なのかはわからないけれど、評価されたいと思っていた、もしくは、認めてもらいたかった時)

 

に、

 

咲けなかった(違う場面で評価されてしまった、ここでは美大の入学試験?)

 

ことに対してのストレスが蓄積して、出てきてしまったのが『真未』なのかな。

 

1週間入院して眠っていたっていうのもポイントな気がする。

 

狂い咲きした人格(真未)が収まって(?)元の蓄えていた自分(深馬自身)が目覚めたとき、

以前のようなできた作品への驚きとか、周りの評価はないけれど、

少しずつ未来に向かっていける。開花していくことはできる。

 

ってことを暗示しているのかな~~~????みたいな。

 

やたらと「春にも咲くのか」を気にしていた部分に関しては、

 

深馬は真未の存在に薄々気付いていたのかどうかはわからないけれど、

 

真未が現れた時、その後ちゃんと自分に戻ってくることが出来るのか、

 

と不安に思っていたところがあったのかな、と。

 

 

 

とりあえず、

 

 

 

 

教えてシゲアキ大先生~~~~!!

 

 

凡人の解釈はここまでです~~~~!!!!!!

 

 

何はともあれ、

 

 

 

舞台、めちゃめちゃ面白かったです~~~~!!!!!!

 

 

行きの新幹線で読んだ『オルタネート』、

 

 

最後の怒涛の展開と

 

 

容ちゃんのがんばりにちょっと泣いちゃいました~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

高校生の頑張りとか、葛藤とか、眩しくて泣いた~~~~~~~!!!!!!!!!!!!

 

 

 

改めて、吉川英治文学新人賞おめでとうございます~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

高校生直木賞受賞もおめでとうございます~~~~~~!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あと知らん間にディ〇ニー関連の仕事決まってるのなに?????????????????